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遺産分割協議をするうえで各相続人に判断能力が備わっていることが前提となります。
認知症や精神障害により判断能力を欠く常況にある者がいて、遺産分割協議ができないときは、住所地の家庭裁判所に後見開始の審判の申立てを行い、選任された成年後見人との間で遺産分割協議をします。なお、後見が開始されると本人は、単独で有効な法律行為ができなくなるほか、医師や弁護士等の公的資格や会社役員の地位を失うこととなります。
後見開始の審判申立てを受けた家庭裁判所は、申立人や成年後見人候補者(親族を候補者とすることは可能)と面談をして、本人の状態を把握し、医学的な精神鑑定を行うなど審理を進めます。申立書には成年後見人候補者を記載できますが、家庭裁判所は独自の判断で弁護士や司法書士、社会福祉士などの専門職後見人を選任することもあります。
ポイントは本人の心身の状態や生活、財産の状況、後見人候補者の職業や経歴、後見人候補者と本人との利害関係の有無などを総合的に判断し本人の利益のためにふさわしい人物を選任します。専門職後見人が選任された場合には報酬を支払う必要もでてくる訳です。また成年後見人の職務は本人が亡くなるか、能力が回復するまで続きます。
何が言いたいかというと、遺産分割協議のために後見人選任の審判の申立てを行い、相続手続きが終了したとしても引続き成年後見人の職務は終わりません。本人の利益のための制度だからです。遺産分割協議にあたっても、本人の法定相続分を確保することが原則となります。