結論をいうと、
「相続登記にあたり被相続人の住所について、住所変更登記は必要ないが、住所の変遷を証明する書類は必要となる。」
という事になります。
では、住所の変遷を(公的に)証明する書類とは
①住民票除票(死亡記載のある最後の住民票)
②引越し前の住所地で発行される住民票除票
(他の市町村に引越しをしてから5年経過で取得出来なくなる事多し)
③戸籍の附票
④改製原戸籍の附票
(コンピューター化による改製より5年経過で取得出来なくなる事多し)
⑤戸籍謄本・除籍謄本・改製原戸籍謄本
(登記先例で認められている方法です。本来住所の証明書ではない戸籍謄本類ですが、記載されている本籍地が登記記録上の住所と一致しているのであれば、同一人である事の証明として利用可能である。)
登記記録上の住所が一つ前の住所であるのなら、①を取得するだけで住所が繋がるのが通常です。
しかし、相続登記では亡くなる方は高齢です。「人に歴史あり」で住所の変遷が多岐にわたり①から⑤の書類で住所が繋がらない、若しくは、5年間の保存期間経過により証明書が取得出来ない事は珍しくありません。
そうすると、登記記録上の人物が、亡くなった方と同一人物かを公的な証明書で証明することが出来ない事となります。
その場合、登記実務においては下記の書類を添付することで、登記記録上に記載されている方が、亡くなった本人と同一人物である旨の証明として評価して貰える取り扱いがあります。
①登記済証(不動産の権利証)
(権利書を持っているのであれば本人である蓋然性が高いことに依る。権利書が有れば、権利書1点でOKと言え、次に挙げる②③までは不要)
②不在籍証明書・不在住証明書(消極的な証明として)
(登記記録上の住所・氏名について「現時点でそのような住所・氏名の方は存在しません。」という内容の証明書を役所で発行してもらいます。)
③相続人全員からの上申書
(登記記録上に記載されている住所・氏名の方が、亡くなった本人と同一人物である旨を上申する内容です。)
<住民票除票、戸籍の附票などが、5年の保存期間経過により廃棄されていると思しき場合>
原則、住民票は除票になってから5年、戸籍の附票も除籍になってから5年、改製原の戸籍の附票もコンピューター化による改製が実施されてから5年で保存期間経過により破棄され、大事な住所の証明書が取得出来ない憂き目に合うケースがあることは確かです。
しかし・・・5年過ぎているからと諦めないで役所に問合せをしてみることをお勧めします。
経験上、5年を過ぎた証明書を出してくれる役所が結構あるのです。
そもそも、5年は短すぎます!紙台帳で管理していた時代の規定に従い5年で出さないと言っているに過ぎません。
今の時代はコンピューター管理でデータは残っている為、5年を過ぎた証明書を発行してくれる役所が存在する訳です。
この住所に関する証明書の保存期間の伸長を求める動きが実際にあります。
世の中的に問題となっている「所有者不明土地」の一因にもなっているからです。
このように、相続登記において被相続人の住所一つとっても難しい問題を含むケースが有ります。
司法書士に相続登記手続きをご依頼頂いた場合、これらすべての書類の収集を含め、手続き一切をおまかせいただけます。