(不動産の売却益から弁護士費用は引けません)
弁護士の協力をもって、数年かかった遺産分割協議がまとまり不動産をようやく相続した後、不動産を売却したとします。
相続した不動産を譲渡した際には、不動産の取得に掛かった費用(取得費)や売却に掛かった費用(譲渡費用)を譲渡所得から差し引いて税金を計算していきます。
しかし遺産分割で争いになったために必要となった弁護士費用は、所得から控除できる費用にはなりません。
「取得費」とは、土地や建物の取得に要した金額に設備費および改良費を加えた金額とされています。
売った不動産の購入代金や建築費、仲介手数料、設備費、改良費や購入時の登録免許税、登記費用、売買契約書の印紙代、不動産取得税、借主を立ち退かせるために支払った立退料、争いのある資産について所有権を確保するために必要な訴訟費用や和解費用も取得費に含まれます。この所有権を確保するために必要な訴訟費用とは、例えば所有者について争いのある土地を購入したあとに、紛争を解決して土地を自分のものとした時の費用のことで、土地を遺産分割するために掛かった弁護士費用は取得費にはなりません。
その他「取得費」に含まれないものとして、維持管理に要した費用があります。固定資産税や修繕費は取得費とはなりません。
もう一方の「譲渡費用」とは、土地・建物を譲渡するために、直接に要した費用のことをいいます。
売却時の仲介手数料、立退料、売買契約書の印紙代、測量費用、家屋の解体費、契約を解除してさらに有利な条件で他と契約する為に支払った違約金、借地権者が借地権を譲渡するために地主に支払う承諾料などが一般的な譲渡費用ですが、修繕費や固定資産税等の維持管理費用や、引っ越し費用、譲渡税の申告に要した税理士報酬などは譲渡費用とはなりません。
ただし、資産の譲渡価値を高めるために、売却に当たって支出した壁の塗り替えや壁紙の貼替えといった費用は譲渡費用となります。しかし、通常に保有していた期間中に支出した場合は、維持管理費用として、取得費にも譲渡費用にも該当しません。
また、抵当権の抹消登記費用や住所変更登記費用は譲渡に直接要した費用とはいえず、譲渡費用にはなりません。
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